細胞の接着、増殖、移動や刺激への反応をリアルタイムでかつラベルフリーでモニタリングすることで、様々な生物学的プロセスや薬剤の効果について、貴重な情報を得ることができます。細胞生物学の研究において、細胞内の変化や影響を測定する際にインピーダンスベースの測定が用いられます。細胞培養プレートに埋め込まれた電極に小さい電流を流した際の反応としてインピーダンスを測定します。細胞がない状態では電流が流れやすいためインピーダンスが低くなり、細胞が接着している状態では電流が流れにくくなり、インピーダンスは逆に高くなります。
この技術により、細胞特異的なプロファイリング、細胞増殖や細胞の行動パターンの観察を行うことができます。インピーダンスは、受容体を介したシグナル伝達により引き起こされるような、わずかな細胞構造の変化にも敏感に反応します。また、何らかの刺激により細胞が死滅、または剥離した場合、インピーダンスは減少します。
AtlaZで測定しているのは、モノレイヤーとなっている細胞の複合インピーダンスの変化を計測します。例えば、受容体への刺激、CAR-T細胞のようなエフェクター細胞、または細胞毒性のある化合物によって引き起こされる反応を計測することができます。本システムは、電極内蔵の96ウェルプレート上で増殖した接着細胞を対象に、インピーダンスを計測することにより、定量的な生細胞分析を行います。
AtlaZはElectrical Impedance Spectroscopy (EIS) を使用し、細胞シグナルのフルスペクトルを記録することで、細胞に関わる非常に幅広い情報を得ることができます。データ取得周波数により、得られる情報は異なります。低周波数帯での測定では、主に細胞-細胞間および細胞-マトリックス間の抵抗成分を測定することができ、高周波数帯での測定では、主に細胞膜の容量性電流を測定することができます。高周波数帯での容量性電流計測は、細胞の接着や移動に関する研究に用いられている一般的な方法の一つです。インピーダンスは、リアルタイムでかつ長期間にわたって計測することが可能です。そのため、細胞のシグナル伝達や増殖、移動、また細胞の形態変化など、様々な細胞フェノタイプについての情報を得ることができます。
EISは一定範囲の周波数 (例えば0.1 - 100 kHz) における特定の交流 (AC) シグナルに応じて、その電気抵抗 (インピーダンス) を測定するための技術です。インピーダンス (Z) は抵抗値と静電容量の二つのパラメータを参照しているため、細胞層の受動的な電気特性を研究するのに役立ちます。
細胞の種類やその状態により、EISの測定に最適な周波数は異なります。通常、AtlaZのセンサープレート上に接着した細胞の測定では、最適な周波数は 1 kHz ~ 50 kHzの間の範囲となります。一般的にはインピーダンスの大きさを、細胞が接着している電極と細胞が接着していない電極で比較することで、最適な周波数帯を特定します。このインピーダンスの比率を縦軸、周波数を横軸にとってプロットすることで、最も感度が高い「スイートスポット」を示すピークを得ることができます。この周波数を用いて測定を行うことで、より高感度に細胞層の特性の変化を検出することが可能となります。
高感度な周波数帯の決定方法
細胞がセンサー上に接着、増殖するにつれてインピーダンスは増加します。細胞が接着している状態と接着していない状態のインピーダンスの比を周波数に対してプロットすることで、最も感度が高い周波数を決定することができます。